念のため、α=130°の場合につき、図7・22によりサイリスタの動作を説明する、w相のサイリスタSwとv相のサイリスタSyが導通していた処にα=130°でサイリスタSuとSyにゲートパルスが送られると、電動機回路の起電力に対し、これまで導通していた整流素子SwとSyの背後の変圧器巻線内部に発生している負方向電圧(図B、図D中のabに相当)よりも整流素子SuとSyの背後の負方向電圧(図中のacに相当)の方が小さいので、Swには電流が流れなくなり、代りにSuに電流が移ることになる。
即ちSwはタ一ンオフし、Suはタ一ンオンして転流が行われる。なお、この際の回路中を流れる電流は「誘導負荷の場合」に示したと同様の現象を生じ、変圧器内部に生じる交流の負方向電圧が高まって電流が減少しようとすると、負荷回路中のインダクタンスによる起電圧が図中のELで示すように電動機の起電圧Eを加勢する方向に発生するので、インダクタンスを十分大きくすると電流の断続を防ぐことができる。
転流失敗防止のための位相制御角
図7・22、図Bの右端の垂直線a’b’c’で示すように万一パルス位相制御角が180°以上になって、図D中のサイリスタSuとSyにゲートパルスが与えられる時はa’b’よりa’c’の値の方が大きく、即ちSySu間の変圧器内部電圧の方がSySw間のそれよりも大きいのでSwはタ一ンオフできないでSuへの転流が行われ得ない。
処でサイリスタは一旦通電電流が無くなっても、タ一ンオフ時間と呼ぶ或る決まった大きさの時間を経過しないで、再び順方向に電圧を加えると電流を阻止することができない特性を有するので位相制御角を180°以下で、ターンオフ時間相当の余裕時間をとるようにしないと転流失敗を起す恐れがある。例えば、Swが転流失敗を起すと、次の瞬間に直列にあるもう一つのサイリスタSzが点弧する場合は電動機側に対し短絡と同様の現象を引き起こすことになる。したがって転流失敗を起さないで安定なインバータ運転を行うために、位相制御角を180°以下のある安全な値に制限する必要がある。多くの場合、この制限値はα=150°程度に設定される。
以上に説明したように、サイリスタ整流器を電源として直流電動機を運転する場合にはパルス位相制御角の変化により電動機として動作する順変換運
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